Story&Introduction

STORY

再会から蘇生されていくもの

 コンビニでアルバイトをしながら、うだつのあがらない毎日を送っていた優介は、夢に出てきた馬の面を被った男のことが頭から離れずにいた。ある日、昔組んでいたバンドのメンバーと再会するが、それは忘れようとしていた過去との再会でもあった。恋人が拾ってきた不気味な人形、ホームレスの男、馬の面、聴こえない音楽。そして優介は、夢の男に導かれるように此処ではない何処かへといざなわれていくのだったが……。

 

 音楽に留まらず、何かを「表現する」という衝動に獲り憑かれた人間の矛盾と狂気が、あらゆる表現者たちと同化し爆発する。

 

INTRODUCTION

夢は叶えるためにある!のか?

 才能があれば夢は叶うのか。なければ叶わないのか。現実に直面し、挫折し、その幻を払拭して人は大人になっていくのだろうか。そもそも、夢が叶うというのはどういうことなのか。誰かに認められるということなのか。だとすると、夢は自分のためのものではないということなのか。叶わなければ「夢」ではないのか。夢は夢のままでは、挫折から逃げているだけなのか――。

 

 誰もが一度は考えたかもしれない青臭い想いを、恥ずかしげもなく曝け出す『花火思想』はストーリーを語ることより、正解のない疑問を語る作品である。主人公の出口なき思想に対する苛立ちは観る者にそのまま反射する鏡になる。作り手も主人公に時に苛立ち、時に共感しつつ自らの夢を「現実」へと変えていく。人に認められる事より、無力さを曝け出すことでしか夢を実現する術はないかのように。

 

主人公を見守るかつて「才能」にぶち当たった男の影

北野武監督作品『キッズ・リターン』において圧倒的な存在感を放ち、今なお精力的に活動を続けるモロ師岡が、今作では主人公を遠目に見守る男として登場する。かつて彼が『キッズ・リターン』で演じたのは才能にぶち当たり、それでも才能にすがりつく一人の男だった。「才能」という言葉に疑問を抱き、それでもなお表現をしようとする主人公をどのような気持ちで見つめているのか。

 

主人公の優介を演じるのは『犀の角』(井土紀州監督)『青二才』(サトウトシキ監督)など、多数の自主映画に出演している櫻井拓也。本作では「表情で語る芝居」が印象的であり、今後の活躍が期待される役者である。

 

 主人公と交流する自由気ままなホームレスの船田を演じるのは、本作が映画初出演となる久保健司。

 また『生きてるものはいないのか』(石井岳龍監督)、『舟を編む』(石井裕也監督)で独特の存在感が注目される芹澤興人、『犀の角』(井土紀州監督)の富岡英里子など実力派の役者が脇を固める一方、主人公・優介と全く異なる価値観を持つ表現者として登場する小説家の松波を、『絵のない夢』(長谷部大輔監督)などで知られる、脚本家の金村英明が演じる。